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会長インタビュー掲載

「アトリエという学びの場」
アトリエ京都・大阪美術学院なんばアトリエ 会長 画家 田村研一(新制作美術協会会員)
聞き手(インタビュアー):
今日は、美術教育の場として「アトリエ」を運営されている田村さんにお話を伺います。田村さんの画塾は、一般的な美術予備校とは異なり、生徒一人ひとりの成長を見極めながら共に学ぶ場だと伺いました。その考えについて詳しく教えていただけますか?
田村(回答者):
はい。美術予備校にはいくつかのタイプがあります。たとえば、徹底的に受験対策を行い合格実績を追求する大手予備校、講師の個性が強く影響するアクの強い画塾、そして学生アルバイトが教える美術教室などです。それぞれに良さがありますが、私は受験対策だけでなく、生徒の考えや成長を見極めながら共に学ぶ場を作りたいと考えて31年前「至現堂美術研究所」をはじめました。
表現に至る場という名前も気に入ってましたが幅広く親しみを持ってもらえる「アトリエ京都」という名称にしました。ただ単に技術を磨くだけの場ではなく、自由に考え、創造し、それそれの表現を模索できる空間にしたかったのです。
聞き手:
技術指導だけでなく、生徒が表現を深めるための「学びの場」としての意義があるのですね。具体的には、どのような指導をされているのでしょうか?
田村:
いつも大切にしているのは、「幅広い視野を持つこと」と「考える力を育むこと」です。
古典の技術や知識を学ぶことも大切ですが、それだけではなく、最先端の現代作家の作品を紹介し、現代の芸術の命題とは何か、未来に求められる表現とは何かを考える機会をつくることに力を入れています。生徒が単に「上手い絵」を描けるようになるだけでなく、時代の変化に対応しながら自分の表現を追求できるようになってほしいと考えています。
聞き手:
受験対策だけでなく、より本質的な表現の探求を重視しているのですね。その姿勢が、高い合格実績にもつながっているということでしょうか?
田村:
そうですね。もちろん、受験に向けた指導も行っていますが、それが目的ではありません。結果的に、多くの生徒が京都市立芸術大学をはじめとする有名美術大学に合格しているのは、生徒の考える力や個性を伸ばすことを大切にしているからだと思います。
また、私は並行して14年間、美術系大学のアニメーション学科で教員を務めていました。そこで得た経験も、現在の指導に大きな影響を与えています。
聞き手:
美大での指導経験もお持ちなんですね。その経験を通じて、どのようなことを学ばれましたか?
田村:
大学では、これからの学生に求められる資質、指導する側の考え方、学生のメンタルケアの重要性、そして美大の社会的な役割など、多くのことを学びました。特に、ダイバーシティ(多様性)や合理的配慮の必要性について深く考える機会がありましたね。
美術の世界にはさまざまなバックグラウンドを持つ学生がいます。個々の事情に応じた学習環境を整えることが重要であり、それが創造性を伸ばすための土台にもなると実感しました。
また、コロナ禍の時期にはデジタルツールを使った課題管理やオンライン配信技術を習得できたのも大きな収穫でした。遠隔授業など、新しい指導方法を模索する中で、教育の在り方そのものを見直すことができたのは、とてもラッキーだったと思います。
聞き手:
大学での指導を通じて、単なる技術指導ではなく、教育のあり方そのものを学ばれたのですね。では、卒業生の活躍についても教えていただけますか?
田村:
これまで多くの生徒を送り出してきましたが、彼らは本当にさまざまな道へ進んでいます。アーティスト、デザイナー、イラストレーター、映像作家、美術大学の教員など、幅広い分野で活躍しています。また、アニメーションやゲーム業界で成功している卒業生も多くいます。
私が特に嬉しいのは、彼らが大学卒業後も、自分なりの表現を続けていることですね。美術大学に合格することはゴールではなく、スタートにすぎません。だからこそ、大学に入った後も創作を続けていけるような指導を大切にしているのです。
聞き手:
受験だけではなく、その先のキャリアを見据えた指導があるからこそ、卒業生が各分野で活躍できるのですね。では、今後の展望についてお聞かせください。
田村:
時代が変わっても、表現の本質は変わりません。しかし、表現の手段やアプローチはどんどん多様化しています。だからこそ、私はこれからも、受験対策だけでなく、将来にわたって「考える力」と「創造の自由」を持ち続けられる人材を育てていきたいと考えています。
そのために、私はできるだけ透明で、普通で、当たり前な画塾を目指しています。特別なカリスマ講師が引っ張るのではなく、誰もが自分の表現を見つけられる場をつくりたい。技術だけでなく、考え、学び、表現する力を養う。それが、私が「アトリエ」で目指していることです。
聞き手:
田村さんのお話を伺って、ここが単なる美術予備校ではなく、本当の意味での「学びの場」であることがよく分かりました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
田村:
こちらこそ、ありがとうございました。
アトリエ京都と大阪美術学院なんばアトリエでみなさんをお待ちしてます。